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緊急呼と垂直位置(高度)情報

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現在、年間2億4千万件の通報のうち8割が携帯電話からの通報となっています。しかし、残念なことに複数フロアの建物内の位置を特定するための垂直位置(Z軸)データが欠落していたり、不正確な傾向があります。Spirentの測定スイートがZ軸の垂直位置精度を含む911に送信されるデータを検証するためにどの様に使用されているのかご紹介します。

イギリスでは999、EUでは112、オーストラリアでは000。助けが必要なとき、ほとんどの国には短い電話番号があり、そこに電話をすれば誰かが助けに来てくれるでしょう。

アメリカでは毎年2億4千万件の911通報が行われていると推定されています。そのため米国では迅速かつ効果的な対応を目的としたインフラ整備に多大な投資を行ってきました。

この目標の一環として1996年、米国の通信規制機関である連邦通信委員会(FCC)はまず電話サービスオペレーターに対し、通話が切断された場合に「コールバック」できるよう通報者の電話番号を911オペレーターに中継する必要があると義務付けました。その後、適切なPublic Safety Answering Point (PSAP)へ911通報を届けるため、モバイルオペレータは911通報を受信する基地局やセルサイトの場所も中継しなければいけないと決めました。当時のほとんどのモバイルコールは屋外から発せられていたので、初期の基盤は911ディスパッチに十分でした。

しかしFCCはモバイルの増加、および技術が急速に進んでいくことを予見し5年以内にすべての911通報の約2/3で、半径125メートル以内の精度で二次元(XとY)の移動局の位置情報がPSAPに提供される必要があると述べていました。

その後VoIP(Voice over Internet Protocol)、TRS(Telecommunications Relay Services)、テキストサービスなど、さまざまな通信方式が追加され現在に至っています。

50メートル精度

最大の変化が2015年に訪れます。FCCは911通報からのデータ精度を民間のGPSのおおよその精度である50メートルを満たすことをオペレータに義務付けるようになりました。しかもこの要件には垂直方向の位置情報も含まれており、FCCはオペレータに3年間の猶予を与えました。

この構想が生まれた1996年当時、911通報の大半は固定電話からのもので、携帯電話からの通報はごく一部でそのほとんどが屋外で発信されていました。911サービスの改善に特化した唯一の非営利団体であるNENAのデータによると、現在では多くの地域で80%以上の911通報が無線デバイスから発信されています。

しかし、垂直方向の位置情報を提供するこの要件は、それが最初に認識されたよりも困難であり、それが欠けていることは想像以上に危険である可能性があります。タワーマンションから通報があった場合を想像してみてください。火災が発生し、パニックになった通報者は自分が何階にいるのかわからなくなっています。消防隊が向かっているが、垂直位置データが欠落しているか不正確なため、何階に行けばいいのかわからない。このような状況は残念ながら実際に起きています。FCCはこの位置情報を提供する義務を通信事業者に課しており、通信事業者はこのプロセスはスマートフォン・メーカーに依存しています。

よりスマートな携帯電話

米国でスマートフォンを使って911に電話をかける場合、携帯電話は自動的にGPSレシーバーをオンにし、通信事業者にあなたの座標を送信します。これは米国市場で販売される携帯電話の必須要件であり、ほとんどの国際対応携帯端末でもこの機能が実装されています。残念ながらGPSレシーバーはすべて同じ品質ではありません。GPSレシーバーとサーバー(キャリアがGPS位置情報を計算する必要がある)は通常、2D測位にのみ最適化されています。高度、すなわち垂直位置情報は簡単に数百メートル、主要都市の高層ビルの高さよりも大きな幅のエラーが発生する可能性があります。

しかし、GPSに頼るだけ以外の選択肢もあります。アップルやサムスンなどの新型携帯電話には、高度を測定できる気圧センサーが搭載されています。正しく設定すれば、911通報の際に救急隊に送信するGPS情報にこの情報を加え、より精度の高い情報を送ることができます。けれどもこれらのデバイスのキャリブレーションはどちらかというと当たり外れが大きいものでした。それが今、変わりつつあります。

Errors can occur with the use of GNSS alone by transmitting inaccurate vertical information resulting in delayed response time. The combination of GNSS with other technologies increases vertical accuracy.

業界一丸となる

垂直位置情報を含む911に送信されるデータを日々検証するためSpirentの測定スイートを使用し、この問題に真剣に取り組んで状況を改善しているいくつかのベンダーやオペレーターとSpirentは協力しています。特に古いモデルではスマートフォンの筐体設計や電子部品の位置によって、垂直位置情報の歪みを簡単に修正できないケースもあります。また、テストデータがキャリブレーション作業に役立ち、簡単な無線アップデートでスマートフォンの位置情報サービスの精度を飛躍的に向上させることができる場合もあります。さらに、このプロセスで得られたデータを設計や製造段階にフィードバックすることで、新しいモデルがFCC 911ルールをより簡単に満たせるようになります。

911サービスに正確な情報を渡すことにオペレータが失敗した場合、潜在的な法的責任があるためこれは業界にとって非常に重要です。罰金は一つの罰則に過ぎません。より深刻な懸念は、不正確な情報により初動が遅くなり、生命を脅かす状況は言うまでもなく致命的です。

オペレータは、特定のブランドや人気のある携帯電話がFCC 911の要件を満たさないと認めた場合、道徳的もしくは法的義務としてそのネットワークへの接続を禁止する権利を持っています。これはもちろんグレーゾーンですが、オペレータとデバイスメーカーの両者は進行中のテストと保証プロセスにFCC 911の規制を取り入れるため、より密接に連携する必要性を強調しています。

スマートフォンはより軽く、より強力で、ますます柔軟になってきています。しかし、適切なテストを行わなければ垂直位置情報の問題はそれ自体では解決しません。

Spirentの8100右矢印アイコン位置情報テクノロジーと、垂直位置情報テストへの対応方法の詳細についてはこちらをご覧ください。

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William Chan

Senior Product Manager

William Chan is a senior product manager for Spirent Communications focused on cellular-assisted positioning solutions for automated device testing. William is actively involved in the 3GPP, CTIA, PTCRB, and GCF organizations where he is a key contributor to test specifications, test plans and validation processes for location testing, covering both GNSS and cellular location technologies such as OTDOA, E-CID, etc. He has concentrated on location technologies for over 18 years, from E-OTD in the GSM era to recent 5G NSA/SA location testing. He frequently works alongside subject matter experts at major US carriers to help define test specifications and plans to satisfy evolving FCC E911 requirements.